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Ⅲ:2
◇
「南、水は?」
「飲む」
「お腹は?」
「軽く」
「先に水持ってくるから待ってて」
「…ん」
それにしても予想外だったのは、秋月の変貌振りだ。時間の制限をなくした途端、今までのヤリ方は何だったんだと問いたくなる程優しく触るようになった。
偶に余りの前戯の長さに俺が根を上げるくらいに、正直ネチこい。そして長い。
短時間でガツガツヤられるのも辛かったが、もう何も出ないって位時間をかけて何度も何度もヤられるのもどうなのか…迷う所だ。だが、秋月は必ず終わると過保護な程に俺を介抱する。
飲み物は要るか、腹は減ってないか。最近では立ち上がれない俺をスラスラと風呂に入れるスキルまで身につけたから、今の俺の体も既にスッキリしている。
「はい、水。起き上がれる?」
「ああ、………いっ」
起き上がるとズキリと痛む腰とあらぬ場所。俺がキッと睨み付けて「ヤリ過ぎなんだよ!!」と言えば、秋月はしゅんと肩を側めた。前髪に隠れて見えないが、多分眉も垂らしているのだろう。
叱られた大型犬みたいでちょっと笑える。
「軽く何か作ってくるから、待ってて」
そう言って俺の頬をするりと撫でてから部屋を出て行く。秋月の触れた場所が、まるで火傷をした様に熱を持った。
俺の同室者は俺以上に不真面目な男で、二週間に一度帰ってくるか来ないか。お陰で殆んど一人部屋に近い生活を送っている。
俺以外の人の気配がしないこの部屋では秋月も過ごし易いのか、カラダを繋げない日ですら泊まることが多くなっていた。
だが、不思議と俺は秋月との生活が嫌ではなかった。あれだけ甘やかされれば、寧ろ心地イイとも言える。寮で過ごす殆んどの時間を共に過ごし、その共に過ごす殆んどの時間、抱かれる。
これで金銭のやり取りがなかったら、完全に恋人なんだろうなと馬鹿なことを最近考えた。
けどそれは本当に馬鹿な話で、大体が俺は男が好きなわけじゃ無い。金だ金。金の為にやってるだけだ。
秋月が何を思って俺とこうした関係を築いているのか知らないが、知ろうとも思わない。これだけ美味しい話はそうそう無いのだから、続くだけ続けられればそれで良いんだ、俺は。
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