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第5話
「ちょっと待って。モデルって、構図の参考にするとかじゃないの?」
「ああ。エロシーンの参考にさせてもらう」
「『えろ』って……、えぇええぇえええ!?」
「ほら、分かったら脱いで脱いで」
こちらに手が伸びてきたかと思うと、羽織っていたパーカーを剥ぎ取られてしまう。身の危険を感じて後ずさるが、背後に泰志が回ってきて完全に逃げ場を失ってしまった。
「れ、廉佳さん待って――って、何で泰志も脱がそうとしてるの!?」
「良いじゃん良いじゃん、減るもんじゃないし。それに、俺と千世にぃのラブラブなところが漫画になるなんて嬉しくない?」
「そうかなぁ……」
『ラブラブ』と言うと語弊があるが、小さい頃からよく「千世にぃ、だーいすき!」と言ってくれたことを思い出す。今でも頻繁に言われるからその言葉には慣れていたし、泰志が千世のことを兄弟として好いてくれていることも知っている。もちろん、千世も泰志のことは大好きだ。
いつの間にか千世よりも体が大きくなってしまったが、まだまだ「可愛い弟」であることに変わりはない。
だがいくら仲良し兄弟とはいえ、超えてはいけない一線はある。
「千世は俺の漫画のモデルになるの嫌か? なってくれたら、すげー助かるんだけど」
「う、うぅ……」
(そんな風に言われたら断りにくいよ……)
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