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第6話

 手を合わせて頭まで下げられたら、押しに弱い千世はいとも簡単に屈してしまう。  そうでなくても、好きな人からの頼みはそう簡単に拒否できるものではないというのに。 「嫌じゃ、ない……一応」 「一応、か。手伝ってもらうのは今回だけだから。悪いな」  歯切れの悪い回答に廉佳は苦笑を漏らす。  悪いと思ってくれているようだから、本当にちょっとだけ。そう自分に言い聞かせた。 「じゃあ早速始めるか! 二人には『初めてのセックスで緊張するカップル』を演じてもらう」 (ただのモデルのはずが、『演じる』ことになってるし……) 「もぅ……早く終わらせてよね」  気恥ずかしさから、ぶっきらぼうな言い方になってしまう。  千世が腹を括ったのを良いことに、廉佳はスケッチブックを取り出してベッドの前の椅子に座り直した。  ベッドがまるで孤島のように思える。 「そんじゃ脱がすよ~」  泰志が千世のTシャツを捲り上げてくる。そこへすかさず廉佳のストップがかかった。 「待て泰志、それじゃ色気の欠片もない。もっとゆっくり、優しくやってくれ。『初めて』なんだからな」 「あーそっか。なら……よいしょっと」 「お、そういうの良いな。ちょっと動かないで」

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