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第32話

「千世にぃが好きだよって」 「ま、紛らわしいこと言わないでよ。『お兄ちゃんとして』僕が好きなんだよね? 僕も泰志のこと弟として――」 「違うよ。千世にぃのことは、恋愛って意味で好き」 「またまた、そんな冗談……」 「本気で冗談だって思う? 昨日あそこまでしておいて」 「でも、それは廉佳さんが」 「廉にぃだけのせい? 千世にぃは俺を受け容れてくれたよね?」  千世の上に被さっている泰志は徐々に距離を詰めてくる。顔が近付いて、鼻先に吐息がかかった。それに無性にどきどきして、体温も上がってしまう。  おかしい。泰志の様子もそうなのだが、何よりも自分がおかしい気がしてならない。弟を未だかつて、こんなに意識したことはあっただろうか。 「確かに、昨日は僕にも非があったよ。でもさ、やっぱり兄弟でもして良いことと悪いことはあるよ」 「なんで? 兄弟でセックスしちゃいけないなんて誰が決めたの?」

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