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第33話

 聞き分けのない子供みたいに拗ねる泰志は、至って真面目な面持ちだ。少し機嫌が悪そうにも見えたが、とても冗談を言っている風には見えない。 「俺は千世にぃが好き。廉にぃにBLのモデルを頼まれた時は、正直ラッキーだと思ったよ。役になりきっちゃえば、どんなに可愛いとか言ってもそれはただの台詞でしかないからね。でもさ、もう我慢できないんだよ。千世にぃが好きだって伝えたくなったんだ。千世にぃはどう?」 「僕は……ぼく、は…………」  もはや『兄弟だから』は通用しない。だが千世にはすでに好きな人がいる。それを伝えようにも、『好きな人』が昨日一緒に濃厚な時間を過ごした幼馴染みだなんて言えるはずもなく。 「ご……ごめん!」 「え、千世にぃ!?」  ベッドから転がり落ちるようにして泰志の下から脱出すると、一目散に部屋から飛び出した。足を下ろす度に腰の奥が痛んだが、今は逃げることが優先だ。と言ってもどこかに逃げ場がある訳でもなく、ひとまず階段を降りて居間へ向かう。

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