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第36話
心臓がどっと跳ね上がる。
喧嘩? あれは、喧嘩なのだろうか。言い争いや仲違いとは無縁だったから、『兄弟喧嘩』というものがよく分からない。だが、もしそうだとしたら泰志との間に軋轢 が生じたことになる。
泰志とは少し気まずくなってしまっただけで、まだ喧嘩には至っていない。そう信じたい。第一、祖母にも余計な心配をかけたくなかった。
「そんなはずないわよね。二人がケンカしてるところなんて、見たことがないもの」
「そ、そうだよ。僕たちずっと仲良しだよ?」
もはや祖母でも兄弟の仲の悪さを疑わない。
それもそうだ。何をするにも一緒だった二人を、ずっと見てきたのだから。
(これは本格的にまずいかも……)
逃げていては何も解決しない。だが、昨日やさっきのようなことをされて、意識するなという方が無理な話だ。そもそも泰志の告白には何と答えれば良いのだろう。僕は廉佳さんが好きだから、と素直に言うべきなのか。いや、むしろ話が拗れるかもしれない。
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