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第42話
家に居るときは常に互いの気配を感じていたから、つい習慣が出てしまった。心がすっきりしないまま玄関へ来ると、背後から祖母の声が響く。
「ちーちゃん、どこか行くの?」
「その……廉佳さんのとこに」
「昨日も行ってなかったかしら? まあいいわ。おばあちゃん、庭のお手入れしてくるわね」
「うん、僕もすぐ戻るよ。行ってきます」
あまり首を突っ込まれたくなくて、千世はせかせかと家を出た。外は梅雨前の貴重な晴れ空。しかし、千世の胸の内はどんよりとした曇り空だ。
目的の家はすぐ隣。数十歩で着いてしまう。震える指でインターホンを押そうとすると、それより先に入り口のドアが勢いよく開く。出てきたのは千世が今一番会いたくて会いたくない人物。廉佳だった。
「千世! 今ちょうどそっちに行こうとしてたんだよ」
「そ、そうなんだ……遅くなってごめんね」
「まあいいや。上がれよ」
「……お邪魔します」
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