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第43話

 先に部屋で待ってろと言われたので、それに従って大人しく待たせてもらうことにする。もう数え切れないほど来た部屋だけど、廉佳の持ち物や匂いに溢れた空間は居るだけでどきどきする。  机の上には画面の大きなデスクトップパソコンとペンタブレット、ポーズ集などが置いてあって、いかにも『絵描き』の部屋だ。前に彼から聞いたのだが、漫画はアナログで、表紙などのカラーはデジタルで描いているらしい。  昨日と同じようにベッドに腰掛けるが、ここで淫らな遊びを繰り広げたことを思い出して床に座り直した。 (やっぱり来ない方が良かったかも……)  緊張で顔が火照る。それを鎮めようと手でパタパタと扇いでいたら、廉佳が入ってきた。 「まだ六月だってのに暑いな~。ほら、麦茶」 「ありがとう」  グラスに入った氷がカラン、と鳴り千世の身体を耳から冷ましていく。廉佳もカーペットが敷かれた床に座り、ちょうど向かい合う形になった。どうせならもう少し離れたところに座ってくれればよかったのに。  冷たい麦茶を啜りながら話を切り出すタイミングを窺っていると、廉佳がその口を開く。 「あ~、その……昨日は悪かったな。ごめん」 「えっ…あ、いや……えっと……」  こうなることは分かりきっていたはずなのに、実際その話になると不要なまでに慌てて何度もどもってしまった。

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