48 / 234

第49話

 あれは確か、二年ほど年前にかなり話題になったアニメだ。とある孤独な殺し屋が主人公で、冷酷だった彼が、ひょんな事から一緒に仕事をすることになったマフィアの明るい青年との繋がりの中で人間らしい感情と仲間との友情を知っていく、という物語。繊細な作画や魅力的なキャラクター、主人公と青年の濃厚な絆が女性の心を掴む一方で、過激な銃撃戦や謎が謎呼ぶ入り組んだストーリーが男性のファンも着実に増やしていった。  『サンセット・スナイパー』通称サンスナはそのお陰で、深夜枠だったにも拘わらず大ヒットを博したのだ。  当時廉佳にDVDを押付けられたので千世もあらすじは知っていた。 「俺さ、それ描いてる人の大ファンなんだ。その人、最初はこうして二次創作を描いてたんだけど創作BLも描き始めてさ、最近商業でデビューしたんだよ! 凄くないか!?」 「そ、そうだね」 「それで俺も憧れたんだ。二次創作でも一次創作でも、自分の好きなものを描けて、それで他の人にも喜んでもらえるような作家に」 「廉佳さん……」  少年のように目を輝かせて語る廉佳を見ると、彼がいかに本気なのかが伝わってくる。憧れの人がいて、やりたいことがあって、目標がある。それは素晴らしいことだし、心の底から応援したい。 「あ、そうだ。何で俺がBLを好きになったかだったよな。――その本もBLなんだ。読めば分かるけど」

ともだちにシェアしよう!