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第55話 ※
「あ、そんな…はげしくしな……ふぁ、ぁあぁ」
律動的に扱き上げる手は徐々に速さを増していき、千世をどんどん追い詰めていく。
廉佳に鏡の中で喘ぐ姿を、体液で濡れそぼつ自身を見られているという事実が、千世に追い打ちをかけた。
「だめ、ぇ…も……イっちゃぅ」
「良いよ。ほら」
「やっ…やだ…あ、ぁあ――んぁああァああ!」
乳首を爪で引っかかれたのか、自身を一際強く握られたのか、どちらが引き金になったのかは分からない。けれど彼の手淫が、意識が飛びそうなほど悦かったのは分かる。目の前が真っ白になってから一拍おいて、達してしまったのだと自覚する。
千世がぐったりとしていると、ベッドサイドに置いてあったティッシュペーパーが何枚も引き抜かれる音がした。
(ぁあ……イっちゃった)
荒い呼吸の中、ぼんやりとする頭ではろくに考え事もできない。ただ、出所でどころ不明の空虚感が千世を包み込んでいた。
(僕、何してるんだろ)
何も言わず身なりを整えてくれている廉佳に対して湧き上がってくる気持ちは羞恥や失望、ましてや怒りでもない。言うなれば、疑念。
どうして自分は流されてしまったのだろう。どうして廉佳はここまで千世にBLのモデルをやらせることに固執するのだろう。
どうして、嫌だと言っても止めてくれなかったのだろう。
(もう、どうしたらいいの?)
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