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第56話 ※
思考回路がぐちゃぐちゃになって、逆に何も考えられなくなっていた。
何から手を付けるべきか分からなくて混乱するばかりの千世に残された手段は一つ。
「――もう、訳分かんないよ!」
感情を、爆発させることだった。
「千世? どうした」
「廉佳さんは酷いよ。僕をどうしたいの? モデルにしたいだけなの? モデルってここまでやらなくちゃいけないの?」
感情と共に涙が溢れてきて頬を濡らす。その様子を見た廉佳は、驚いたように少し眼を見開いた。
「千世……」
誤解しないで。怒っているんじゃない。廉佳のことが理解できなくて、自分の気持ちすら満足に伝えられないことが情けなくて、頭が一杯一杯なだけなんだ。
それを、子供の様に泣くことでしか表現できない。
(駄目だ。このまま勢いで言っちゃいそう)
「昨日も、怖かったしすごく恥ずかしかったけど、廉佳さんに嫌われたくなくて頑張ったんだ」
「そっか、ごめん。でも俺、そんなことでお前を嫌いになったりしないぞ」
「そ、なこと…知ってるよ。廉佳さん優しいもん。それを知ってても、好きな人に嫌われたくないって思うのはどうしようもないんだよ!」
ああ、終わった。
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