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第68話

 泰志と一緒に家を出る習慣も変わっていない。千世が大学生になって授業が二限から始まる日はさすがにこうもいかないが、子供の頃からずっと繰り返している。 「ねぇ千世にぃ。たまには高校にも遊びに行ったら? 去年千世にぃの担任だった人が今の担任なんだけど、『宇藤兄の方は元気にしてるのか?』って聞かれたんだ」 「そうなんだ。……うん、時間があったらね」  今は普通の兄弟として過ごしているけれど、千世の態度がどうしてもぎこちなくなってしまう。それでも変わりなく接してくれる泰志が、実は一番傷付いているのではないだろうか。 (早く…早く、僕は廉佳さんが好きだって言わないと) 「あっ、あの……泰志――」 「うわヤバ、信号変わりそう。じゃあ千世にぃ、行ってくるね!」  点滅を始めた青信号に機会を横取りされ、泰志は走って行ってしまった。振り向きざまに手を振る彼に千世も小さく手を振り返す。  この五日間、こんなことが続いていた。そして、その度に溜息が重くなっていく。 「僕も行かないと。遅刻しちゃう」  そう呟いて、人通りの少ない道路を独りで歩いていった。

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