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第71話
いつもならすれ違う度に声をかけてくれるのに、今日は一瞬眼が合っただけで終わってしまった。そんな些細なところからも、自分が嫌われているのではないかという不安に駆られる。
だから気分転換にでも本を読みたくなったのだ。
学食を出て隣にある図書館へ行こうとするが、正面の出入り口はまだ混んでいたため裏口へ回ることにした。そうした方が図書館へも近かったことを思い出し、千世の足も知らず知らずのうちに速くなる。
だが周りを確認しないで外に出たのがいけなかった。
学食に入ってこようとする人影が横から急に現れ、避けきれなかった千世はその人物と出会い頭に衝突してしまう。
「わっ! ご、ごめんなさい!」
「いやこっちこそ――って、千世!?」
「へ? あ、あれ、廉佳さん?」
見上げるとそこにはさっきまで。千世と同じく目を点にしている。
「ど、どうしたの? 学食の中にいたんじゃ……」
「あぁ……ちょっと、色々あって。千世はどうしたんだ?」
「僕は、図書館に行こうかと思って……」
「そうか……」
「……」
(か、会話が続かない……)
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