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第78話

『もしもし千世にぃ? これから廉にぃと一緒に帰るから』 「え!? 何勝手なこと言ってんの」 『は!? 何勝手なこと言ってんだよ』  見事に重なった二人の声に構うことなく泰志は電話を切ってしまった。普段は、上がれと言われても断らない廉佳だが、今は事情が事情なだけに慌てふためいていたのが音だけで分かる。  予想もしていなかった弟の登場に、千世も廉佳と同じ気分だ。  特に散らかってもいない部屋を片付けた方がよいのかとうろうろしていると、二人分の足音が階段を上ってきた。 「千世にぃ、ただいま~」 「お、おう……邪魔するな」 「お帰り泰志。廉佳さんも、いらっしゃい……」  相変わらずの泰志とは違い、千世と廉佳の間には薄い壁があった。目敏い弟は、そんな二人の僅かな(ひず)みでさえも見逃さない。 「二人とも何かあったでしょ。モデルの件のこと、まだ引きずってる?」  正確には泰志とのいざこざも解決ていないのだが、自分のことは棚に上げて千世と廉佳のことにまで首を突っ込んでくる。が、廉佳は迷惑には思っていないようで。 「ああそうだ、まだ引きずってる。でも丁度良かったかもな。泰志が無理やり連れてきてくれたお陰で吹っ切れた」 「廉佳さん?」 「千世、お前が好きだ。あの時お前に惚れたんだよ。モデルとかは一切抜きにして、可愛い千世が大好きだ」

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