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第98話

 自分が優柔不断でごめん、と三人でいる時に話したこともあったが、口を揃えて『それで良いんじゃない?』と言われてしまったので千世も現状を受け容れている。 そんなこんなで廉佳とは幼馴染みかつ恋人、泰志とは兄弟かつ愛人という不思議な関係が続いていた。  そこへ、一本の電話がかかってくる。 『もしもし千世?』 「廉佳さん、どうしたの?」 『ちょっと見せたいものがあるから泰志と一緒にうちに来てくれないか』 「分かった、すぐ行くね」 「ああ、待ってる。鍵開いてるから勝手に入ってくれ」  二十秒にも満たない短い通話が終わると、同じ部屋に居た泰志が千世の顔を覗き込んでくる。 「廉にぃ、何だって?」 「見せたいものがあるから来て、だって」 「ふーん。何だろうね」 「行けば分かるんじゃないかな」 「そうだね。じゃあ、れっつごー」  土曜日の夕方。みんな授業はないし、翌日は日曜日だから廉佳の家でゆっくりするのも良いかもしれない。廉佳か泰志のどちらかと過ごすのも好きだが、昔から続いているように三人で取り留めのない話をしている時間が一番楽しかったりする。  隣家に行くだけなので、二人はポケットに携帯電話を突っ込んで家を出た。 「「お邪魔しまーす」」  開いていた玄関から、言われた通り勝手に上がらせてもらう。廉佳の両親は仕事で海外にいるので、この家にいるのはただ一人。

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