98 / 234
第99話
「おー、急に呼び出して悪いな。適当に座ってくれ」
いつもそう言ってくれるのだが、彼の部屋は漫画で埋まった本棚ばかりがあるせいであまり広くないから、結局ベッドに腰を下ろすことになる。そのベッドも、ゆったりと寝たいという廉佳のこだわりでセミダブルだから、余計に床の面積が少ないのだ。
「それで何の用なの? 俺達に見せたいものって?」
「そうそう。これなんだ――」
廉佳が机の引き出しから大きめの封筒を取り出して千世に渡してきた。それを開けてみると、中から数十枚の紙の束が出てくる。
原稿用紙だ。それも漫画の。
「二人にモデルをしてもらったときのやつが完成したんだ。だから、最初にお前らに見せたくてさ」
「これが……」
自分たちを参考にされているのかと思うと気恥ずかしいが、こうして廉佳の役に立っているのを実感すると素直に嬉しくなってくる。
「わぁ、やっぱ廉にぃは絵上手いよ。千世にぃ、早く読もう」
「うんっ」
緊張で震える手で恐る恐るページを捲る。
今回も主人公格の二人の登場人物は高校生だった。だが前回はクラスメイト同士だったのに対して、今回は義兄弟という設定になっている。
ともだちにシェアしよう!