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第100話

 キャラクターの外見もどことなく千世と泰志に似ていた。何だか照れ臭かったが、次第にストーリーに引き込まれてしまう。  中学生の時に親の再婚でできた一つ年下の義弟に一目惚れで恋に落ちる主人公の葛藤と苦悩。そして、四六時中一緒にいるが故に些細なことでもときめいてしまう主人公の純情さが瑞々しく(えが)かれていた。自分もこんな恋がしてみたいと思えるほどに。 (前のも面白かったけど、やっぱりこっちの方が上達してるみたい)  千世は前作で廉佳が編集部から貰ったという講評をしっかり覚えていた。 『画力はあるが設定にオリジナリティーが足りない。キャラの心情をもっと丁寧に描写した方が良い』  やはり読み慣れていないジャンルなのでどんな設定がありきたりなのかは分からないままだ。しかし弟のキャラが、普段は表に出さないけれど重度のブラコンでSっ気があるなんて斬新だと思った。 (ええと、何て言うんだっけ。受けと……攻め?)  廉佳に言われたことを思い出しつつ漫画を読み進める。これは弟が攻めで兄が受けのストーリー。まるで自分達みたいだ、なんて思ったけど恥ずかしくて口には出さない。 (あ――来た)  話の中盤から終盤にかけて、例のシーン(・・・・・)が現れる。あんなに身体を張ったのだから、上手くなっていてもらわないと困る。  告白した兄と弟が両想いだったことが判明し、盛り上がった二人がベッドに倒れ込む。熱い口付けを交わす中、弟がこんな一言を放つのだ。

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