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第102話

 紅潮を隠さずに真っ直ぐ廉佳の眼を見て伝えると、彼は喜びの表情を湛えて破顔する。千世もその顔が大好きだった。 「やっ…た。俺、この作品でまた応募するつもりなんだ」 「廉佳さんならいけるよ。廉佳さんは努力家で、本気になったことには一生懸命取り組んで妥協しない立派な人だから」 「ありがとう! これが描けたのはほんとお前のお陰だよ。そうだ、早速これ出しに郵便局行ってくる!」 「えっ、今日土曜日――」 「……あっ」  珍しく落ち着きを失っている廉佳が、決まり悪そうに頭をぽりぽりと掻く。千世に褒められたことがよほど嬉しいのだろう。 「ねぇ廉にぃ、もしこれが受賞したらどうするの?」  泰志が原稿を読み直しながら言う。確かに、まだ確証はないが賞を取ってデビューでもしたら学校はどうするのだろう。 「もしそうなったら――俺は漫画一本で食っていきたいな」 「マジで!? 今漫画家って大変なんじゃないの?」 「ああ。それでももう決めたことだから。これでデビューできなくても絶対に諦めないからな。俺は就活しないで漫画描く」  廉佳の眼は一点の曇りもない。真剣に、夢だけを見つめていた。 「すごい。廉佳さん、本気なんだね……それなら僕も応援するよ」

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