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第106話
だがこうも暑くては勉強にも支障がでてしまう。
「図書館にでも行ってきたら? ここよりは涼しくて集中できるんじゃないかな」
「え~、俺静かすぎる所は逆に落ち着かないんだよね」
「あ、そうだったね」
どうしようもないので庭に打ち水でもしてこようかと考えていたら、ちゃぶ台に置いてあった千世の携帯電話が鳴った。誰かと思えば、大学で仲が良い高河 からだ。
「もしも――」
「もしもし宇藤 ! いきなりで悪いんだけど、急ぎで頼みたいことがあるんだ。良いか?」
高河はかなり慌てた様子で開口一番に捲 し立ててきたので気圧 されてしまった。
相手がどれだけの緊急事態に巻き込まれているのかは分からないが、何が起こったのか話を聞かないことには始まらない。
「うん、どうしたの?」
「お前さ、明日うちの大学でオープンキャンパスやるの知ってるか?」
「あー、うん。一応」
「そのスタッフって生徒がバイトでやってるんだけど、一人夏風邪で倒れちゃってさ。宇藤に代わってもらいたいんだ」
オープンキャンパスといえば、主に高校生が来る大学のイベントだ。欠員が出たとなれば他のスタッフも困るだろう。しかし、とても千世に務まる役目だとは思えなかった。
「僕も出来れば手伝いたいんだけど……ほら、僕人見知りだから」
「大丈夫大丈夫、俺達もサポートするから!」
「で、でも……」
スタッフの仕事といえば、受付や誘導、校内案内などだろう。どれも人見知りであがり症の千世には向いていないとしか思えない。
だが千世が渋っているところにとどめの一言が放たれる。
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