106 / 234

第107話

(ちな)みに福津先輩も来るぞ」 「やる」  我ながら呆れるほどの即答だった。 「ありがとー! お前なら引き受けてくれるって思ってたよ。じゃあ明日の朝九時、一号館のゲート下に集合な」 「うん。明日はよろしく」  電話が切れて、再び千世と泰志だけの空間になる。 (――や、やっちゃった……) 「千世にぃ、なんか暗い顔だけどどうしたの?」 「明日僕の大学のオープンキャンパスがあるんだけど、そのスタッフのバイトを頼まれちゃって」 「よく『やる』って言ったね。千世にぃ人見知りじゃん」 「それが、廉佳さんも来るって言われて……」  高河は最初から、廉佳が参加すると言えば千世が二つ返事で応諾(おうだく)すると思って電話をかけてきたのだろう。恋人であることは誰にも話していないが、高河は千世と廉佳が幼馴染みであると知っている。  まんまと餌に釣られてしまった自分にも非があるが、応じてしまった以上責任を持って成し遂げなければ。人前に出るのは苦手だが、責任感が強いところは長所なのだ。 「まったく、千世にぃは廉にぃのこととなると周りが見えなくなっちゃうよね」 「そ、それは仕方ないというか……。だって好きなんだもん」  ただでさえ暑いのに、さらに顔を熱くしてしまう。 「ふーん。愛人とはいっても、目の前で惚気(のろけ)られると妬いちゃうな」 「そんなこと、いわれても」 「ねぇ千世にぃ。汗かいたらさ、気化熱で涼しくなると思わない?」 「な、なに急に……」

ともだちにシェアしよう!