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第117話 ※
「……好き。千世にぃが、大好き」
「ん……僕も、好き」
甘えた口調で言われ、千世の胸に愛おしさが込み上げてくる。
廉佳という恋人がいるのに『好き』と言うのもどうかと思ったが、伝えずにはいられないのだ。
自分は泰志も好きだ。身体を繋げる行為まで許すほどに。でもそれは彼が弟だから。
千世が抱いているのは家族愛。廉佳への想いとは少し違う。
はずだった。
(最近の僕、どこか変だ……)
今までは全く気にならなかったこと――同じ物を取ろうとして指先が触れるだけでも泰志を意識してしまって眼が合わせられなくなる。
(僕、どうすればいいんだろう)
泰志に抱かれる度に彼への『愛』の種類が変わってしまいそうになる。優しく激しく身体を犯されているうちに心まで浸食されてしまった。泰志が千世を抱くのは『好き』だからに他ならない。その気持ちが痛いほど伝わってくるのだ。恐らく、襟足の噛み跡もその現れだ。
(僕は泰志にも恋してるのかな)
千世の想い人はずっと廉佳だ。今までも、これからも。
二人を同時に好きになるなんて、許されるのだろうか。誰の許可が必要なのだろうか。
何も、分からない。
分からないから、千世は強く抱き締めてくる泰志の背中にそっと腕を回すのだった。
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