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第123話

「ぶ、ぶかぶかの方が風通しも良いなー、なんて……」 「千世、それいつ付けられた?」  いやに冷静な廉佳の声で胸元に眼を落とすと、鎖骨の下の方――昨日泰志が強く吸ったところに、紅い痕がくっきりと残っていた。襟でぎりぎり隠れる場所だが、上から見たらすぐに分かってしまう。  もしかして、ずっと見えていたのだろうか。だとしたら恥ずかしすぎる。 「いつ付けられたんだ?」 「き、昨日……泰志に。いつから気付いてた?」 「受け付け始めた時から」  つまり朝から気にはなっていたが口に出してこなかったということだ。TPOを考えて伝えてくれたことには感謝すべきだろう。しかし他の人にも見られていた可能性も無きにしもあらずだ。 「ど、どうしよう……みんなにも見られちゃったかな……」 「いや、かなり近付かないと分からないから心配するほどでもないんじゃないか。もしものことがあっても、虫刺されって言っとけ」 「あ、うん。そうだね」 「でも泰志にはちゃんと、見えるとことに痕付けるなって注意しとけよ」  言われてみると、廉佳がキスマークを付けるのはいつも内腿や下腹部といった服を脱がないと見えないところだ。首に付けたとしても髪で隠れることろで、彼なりに千世のことを考えてくれていたのだと知って嬉しくなる。  今回はTシャツのサイズが合わないというハプニングもあったが、後で泰志に言っておかなければ。泰志は約束を守ってくれる弟だ。すぐに理解してくれるだろう。

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