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第126話

 中性的だと言われることに関してはもう諦めているが、こんなに『可愛い』と連呼してくるのは廉佳と泰志くらいだ。 「ちっちゃくて、髪が長くてふわふわで、照れ屋で、あと笑う時いつも眉が困ったみたいに下がるんだ。そういう笑い方も可愛い」 「わ、わあぁあ! やっぱりもういいから」  予想以上の答えが返ってきて、こちらが恥ずかしくなってきた。もしや泰志も同じことを思っているのだろうか。一度彼らの頭の中を調べてみたい。  千世も本心としては長身の人には憧れているし、髪も美容室が苦手だから仕方のないことだ。 照れ屋で人見知りなところも将来のために直さなければ、と思っている。  それを伝えると、廉佳は快活なまでに笑う。 「そんなこと気にしてたのか? もっと前向きに考えたらどうだ。背が低いってだけで人と親しみやすくなることもあるし、髪型だって似合ってるんだから良いじゃないか。人見知りだって言っても初対面の人だけだろ。お前にだって友達はいるんだ、仲良くなれば平気ってことだよ」 「――廉佳さん……」  彼の言葉が、一言一句が、千世の中に沁み渡っていく。自分のことを昔から見てきてくれた廉佳だから言えることだ。  いつの間にか人生相談のようになってしまったが、彼の助言に少なからず励まされた。 「っと、あんまり話してると休憩終わっちまうな。千世が食べてるとこ、描いてていいか?」 「ちょっと恥ずかしいけど、廉佳さんにだけ、特別だよ」 「それは光栄だな」  千世は精一杯の笑顔を彼に向けた。  彼のスケッチブックを盗み見ると、眉尻を下げて顔を綻ばす自分の顔が描かれていて。廉佳の眼には特別なフィルターがかかっているのだろう。紙の上の千世は窓からの逆光も相まって、燦々(さんさん)とした笑みを顔いっぱいに浮かべていた。

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