126 / 234
第127話
***
「はい、今日はこれで解散でーす。お疲れ様でした」
事務員の男性が呼びかけると、全ての仕事を終え、帰り支度も済ませて集まっていたスタッフ達が一斉に『お疲れ様でした!』と叫んだ。一日の充実感からか、疲労の色は見えるがみんな朝よりも挨拶の声に張りがある。
千世も無事にスタッフとしての役目を果たし、達成感に浸っていた。
「千世、こういうことやるの初めてだったよな。よく頑張ったな」
「廉佳さんが居てくれたからだよ。今日はありがとう」
夏の日は長い。夕暮れにはまだ少し早い空の下で、ずっと一緒に居てくれた廉佳が千世の肩を抱く。周りに人が大勢いるところでなんて大胆なんだと顔に熱が集まるが、廉佳は深い意味があってやった訳ではないらしい。
「なあ、これから時間あるか?」
「え? うん、あとは帰るだけだったし、大丈夫だよ」
むしろ冷房が壊れている家に帰るより涼しくなる時間まで廉佳と過ごした方が良いに決まっている。
「ちょっと俺の用事に付き合ってほしいんだ」
頭の上に疑問符を浮かべる千世に、彼はそっと微笑みかけるだけだった。
そこへ、どこからか千世を呼ぶ声が響く。
「おーい宇藤ー!」
昨日アルバイトを頼んできた高河だ。
「本当は朝にも声かけようと思ってたんだけどお前なかなか来ないし、その後も俺の方がばたばたしちゃってさ。今日はありがとな」
「ううん、高河君もお疲れ様」
ともだちにシェアしよう!