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第131話

 窓を閉め切った廊下は蒸し暑く、千世は火照った顔を冷まそうと溶けかけたアイスをぺろぺろと下から舐め上げた。 「ん……」 「お前、それ……」 「え?」 「……いや、何でもない」  アイスを食べ終わっていた廉佳が口元を抑えて、気まずそうに眼を逸らす。まずいことでもしただろうか。  千世は構わずにアイスキャンディーに舌を這わせるが、次々と垂れてくる甘い雫に追いつかず、手の方まで汚してしまう。何とか食べ終わっても手がべとべとになってしまった。 「あーあ。ほら、貸してみ」  廉佳はアイスの棒を持っていた千世の右手を取ると、そこに口を寄せてきた。 「れ、廉佳さん!?」  彼の舌が手の平に触れた。そして苺ミルク味の零露(れいろ)を綺麗に舐め取っていく。 「甘いな……」  指先をしゃぶられ、指の股まで舐め尽くされて千世はくすぐったさに似た感覚に堪え忍ぶ。  千世の手を、それこそアイスのように味わう廉佳の(なまめ)かしさに頭がくらくらとしてきた。 「ねえ…もう、べたべたしないよ?」 「うーん、もうちょっとだけ」

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