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第141話 

 独占欲。それを彼が抱いているなら原因は廉佳だ。泰志を苦しめるだけの関係は断ち切りたいが、そうしてしまったら彼と『兄弟』ですらいられなくなってしまう気がして怖い。 「僕、お兄ちゃんだから。このくらい」 「千世。このままだと困るのはお前だぞ」  廉佳の声に重みが増していく。  千世としては泰志の好きにさせてやりたいと思っているが、確かにこれがエスカレートして日常生活に支障が出るようになれば悩みものだ。それなら早いうちに止めさせなければならない。 「あいつも千世のことを本気で想ってるなら止めてくれるはずだ」 「うん……」 「じゃあ行くか。帰ったらちゃんと泰志と話すんだぞ。無理させて悪かったな」 「うん」  廉佳の優しい口調に千世も素直に頷く。  備え付けのトイレットペーパーで後始末をし、身支度を整えて男子トイレを後にした。  廊下に出ると陽はすっかり傾いて校舎中が橙色に染まっていて。 「雰囲気があって良いな。背景の素材にはもってこいだ」 「夕陽、綺麗だね」

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