140 / 234
第141話
独占欲。それを彼が抱いているなら原因は廉佳だ。泰志を苦しめるだけの関係は断ち切りたいが、そうしてしまったら彼と『兄弟』ですらいられなくなってしまう気がして怖い。
「僕、お兄ちゃんだから。このくらい」
「千世。このままだと困るのはお前だぞ」
廉佳の声に重みが増していく。
千世としては泰志の好きにさせてやりたいと思っているが、確かにこれがエスカレートして日常生活に支障が出るようになれば悩みものだ。それなら早いうちに止めさせなければならない。
「あいつも千世のことを本気で想ってるなら止めてくれるはずだ」
「うん……」
「じゃあ行くか。帰ったらちゃんと泰志と話すんだぞ。無理させて悪かったな」
「うん」
廉佳の優しい口調に千世も素直に頷く。
備え付けのトイレットペーパーで後始末をし、身支度を整えて男子トイレを後にした。
廊下に出ると陽はすっかり傾いて校舎中が橙色に染まっていて。
「雰囲気があって良いな。背景の素材にはもってこいだ」
「夕陽、綺麗だね」
ともだちにシェアしよう!