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第144話

 本に興味がなくなってしまった泰志は千世にちょっかいをかけるように、肩に頭を乗せてきたり足下に寝転がったりしてくる。  そんな風に『構ってほしいアピール』をされては、千世が折れるしかない。 「どうしたの? 今日はやけに甘えん坊さんだね」 「ん~、なんか今日は千世にぃにべたべたしたい気分」  自分より身体が大きいくせに、たまにこういうところがあるから愛おしくて仕方ない。いつもは千世が可愛い可愛いと言われるが、自分に甘えてくる泰志も充分可愛いと思う。  千世は本に栞を挟んでから一旦閉じて横に置いた。 「それで、どうしてほしいの?」 「どうもしないよ。ただ、俺と一緒に居てほしい」  ベッドに寝転がりながら上目遣いで言われ、鼓動が少し速まる。  兄に甘えることは多々あるが、こうして男の表情をされると泰志を弟として見るには魅力的すぎた。 「俺は勝手に千世にぃのこと観察してるから、適当に本読んでていいよ」 「さすがにそれは……集中できないかな」  苦笑いを零していると、机に置いてあった携帯電話の着信音が鳴り響く。千世が行くよりも先に泰志が携帯を取り、ディスプレイを確認した。 「廉にぃからだ。出ていい?」

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