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第145話

 昔から三人で過ごしてきたので、廉佳に限っては千世にかかってきた電話に泰志が出ることも、その逆に泰志への電話に千世が出ることもよくある。  千世は深く考えずに頷いた。 「もしもし廉にぃ」  泰志が何度か相槌を打つと、再びベッドに腰を下ろして携帯電話をスピーカーに切り替えた。 「なんか千世にぃに頼み事があるっぽい」 「そう。頼み事って何? 廉佳さん」 『いきなりで悪いな。明日って空いてるか?』 「うん、空いてるけど……」  夏休みに入ってから急な頼まれ事が増えたな、と能天気に構えていると廉佳が気迫に溢れた声で言う。 『千世にしか出来ないことがあるんだ。俺の力になってくれ!』 「ど、どうしたの? 僕で良ければ何でもするよ」  こんなに困った様子の廉佳は今まで見たことが、いや聞いたことがない。一体どんな顔をしているのだろう。その前に、何があったのだろう。 『ほんっとに助かるよ! 明日の朝十時半、これから送る地図の目印の所に来てほしいんだ』 「それ、どんな所?」 『ちょっとしたイベントだよ。千世に手伝ってほしいんだ』 「わ、分かった。頑張るね」  廉佳たっての頼みとあらば理由もなく了承してしまう自分の現金さはどうしようもない。先日のオープンキャンパススタッフの時も何とかなったのだから、と楽観的に考えていた。  そこへ泰志が口を挟む。

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