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第148話

      *** (な、なにこれ……凄い人)  当日、会場にやって来た千世は数え切れない程の人の波に圧倒されていた。残暑厳しいというのに、どこからこんなに人がやって来るのだろう。  あれからイベントについて調べたら、入場時間が十時からになっていた。どうして待ち合わせを十時半にしたのだろうと気になっていたが、ゲートが開いても先に並んでいた人達からの入場になるので、十時ぴったりに中に入れる訳ではない。廉佳はそれを見越していたのだろう。 「ちゃんと廉佳さんのとこまで行けるかな?」  周りは女性ばかりでアウェー感を覚える中、昨日廉佳から送られてきた地図を片手に歩き出す。方向音痴ではないのだから迷うことはないと思う。多分。  ひとまず入場して目的のホールを目指すことにした。廉佳が居るのは北側。ここからは少し離れている。  途中で何度も地図を確認し、行き交う人々と何度もぶつかりそうになりながらも、待ち合わせに遅れないように早歩きで向かう。途中でイベントスタッフに道を尋ねたりしながら、やっとの思いで北側のホールに辿り着いた。 (ようやくここまで来れた。あとはこの中から廉佳さんのスペースを探すだけなんだけど)  地図によるとそこは大まかに分かれたスペースの塊のうちの一つ。その角にあった。 (えっと、『オ』の『2』だから……) 「千世ー! こっちこっち!」  どこか、あまり遠くはない場所から廉佳の声がする。千世は本人の姿を探してきょろきょろと辺りを見回した。女性ばかりの会場で廉佳の声はよく響く。もう一度、意識を集中させてありったけの聴覚と第六感で彼を見いだした。

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