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第152話

(昨日、ちゃんとイベントの内容を聞いておくんだった)  後悔先に立たず、とは正に今の状態のことを言うのだろう。  紙袋片手にるんるんとした気分の廉佳には音符が飛んでいる背景が相応しい。だがそんな嬉しそうな廉佳を見ているだけで千世も同じような気分になってしまいそうで少し悔しかった。  彼の手にかかれば更衣室まで迷うことなくすいすいと進むことができ、千世は気が付けば更衣室の中に立っていた。 「意外と空いてるんだね」 「女性が多いからな。男性で、しかもコスプレとなるとあまりいないよ」 「へぇ……それで、どんな服なの?」  すると廉佳は得意げに鼻を鳴らし、待ってましたと言わんばかりの勢いで紙袋から衣装を取り出した。それを見た千世はいよいよ涙目になってしまう。 「ちょっ――これ、女の子の格好じゃないの!?」  上は青い襟と同じ色のラインが 袖に入った半袖のセーラーブラウスと、ネクタイのようなリボン。下は千世が穿いたこともないくらい短いパンツと、何とニーハイソックス。そして水兵が身に付けているような帽子もセットだった。 「何を言う。これはサンスナに出てくる(れっき)とした男の子、ルリくんの衣装だ。いや正確には男の娘か」 「おとこのこ?」 「こっちの話だ。まあとにかく、これは女装なんかじゃない!」 「でも恥ずかしいよ! 何で昨日のうちにコスプレしてほしいって言ってくれなかったの?」 「言ったら断られると思ったから」

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