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第153話

 ということは、千世を断れない状況に追い込んで何が何でもこの衣装を着せるつもりなのだろう。 「僕は着ないからね!」 「そこを何とか! 着てくれたら千世の言うこと何でも聞くから」 「――何でも?」  その言葉に千世の決意が揺らぐ。人見知りの千世がコスプレをするのだ、廉佳にもそれなりのことをやってもらわないと割に合わない。とびっきり恥ずかしいことをやってもらおう。  だが真剣に考えているうちに、別のお願いが浮かんできてしまった。というより、廉佳にやってもらいたい『恥ずかしいこと』が思い付かない。  千世と廉佳が恋人になってからの約三ヶ月、未だ大切なことをしていなかった。  「じゃあ……今度、どこかにデートに連れてって!」 「デート? そんなんで良いのか?」  廉佳が拍子抜けしたように言う。 「デートで良い……ううん、デートが良いんだ。僕たちいつも一緒に居るから、お互いの家を行ったり来たりするだけでしょ。だから、廉佳さんと遊園地とかに行ってみたいんだ」  千世が最後に廉佳と遊びに行ったのは中学生の頃。その時は水族館だったが、二人きりではなく互いの家族も連れ添って行ったので特別な雰囲気は全くなかった。  恋人になったはいいが、いつまで経っても性的なこと以外は幼馴染みから発展しない関係に終止符を打ちたかったのだ。 「そっか、千世も俺とおんなじこと考えてたんだな……」 「おんなじこと?」 「あー……この前、もし俺が漫画で賞を取れたら――って少し話したの覚えてるか?」 「うん、覚えてるよ」

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