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第154話
千世がモデルとして協力した漫画を描き終えた時、そんな話をされた記憶がある。詳しく聞こうとしてもはぐらかされてしまったが。
「実は、もし賞を取れたら俺とデートしてくれって言おうとしてたんだ。まさか千世に先を越されるとはな」
「そ、そうだったの?」
「俺たちって、改まってデートするような関係じゃないっていうか、そうするには距離が近すぎて今更って感じだったんだけど、千世も同じこと考えててくれて嬉しいよ」
「うん! 僕もすごく嬉しい!」
千世は嬉々として満面の笑みを浮かべる。たまには恋人らしいお願いができたと思っていると、すぐに千世にお鉢が回ってきた。
「じゃあそれは今度するとして、今は千世のコスプレだ」
「あ…………はい」
デートの約束をこぎつけた以上、千世もやるしかない。デートのためだと自らに言い聞かせて紙袋を受け取った。
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