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第158話
数え切れないほどの視線をくぐり抜けてスペースに戻ると、売り子をしていた廉佳の女友達が千世を見た途端口を開けたまま固まってしまった。一拍おいて彼女が手を合わせて拝んできたので顔を上げるよう伝えると、曰いわく『尊すぎて眼がやられた』のだそうだ。千世には乙女心というものがよく分からないのだが、廉佳と同じくはしゃいでいることは確かだ。
千世はどんな反応をしたら良いのか分からなくて苦笑を零すが、二人が、特に廉佳が楽しそうならば悪い気はしない。
「よーし、これから人増えてくるから気合い入れていくぞ!」
最後に廉佳のかけ声に合わせ、三人で拳を突き上げてイベントの成功を祈る。
廉佳が一生懸命になっているのだから自分も出来るだけ頑張ろう。そんな思いで千世は握った小さな手に力を籠めた。
(座ってるだけだから、大丈夫だよね――?)
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