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第174話 ※
泰志の激しいキスは頭が溶けそうになる。舌を引きずり出されては甘噛みされ、呼吸すらままならない。溢れる唾液を飲み下すと彼の舌が口腔をかき回し、粘膜が擦れ合う感触に身体の熱が上がった。
息を継ごうとして一瞬口が離れる。その時、スマートフォンの着信音が鳴った。これは泰志のものだ。
無視を決め込もうとしているのか彼が電話に出る気配はない。しかし着信音はなかなか鳴り止まず、観念したのか泰志は不機嫌そうに尻ポケットの携帯を取り出した。
「廉にぃだ……――もしもし? 今良いとこだったんだけど」
こんな時に廉佳から電話がかかってくるとは。悪いことをしている訳ではないのに、妙にどきどきしてしまう。
距離が近いから、電話の向こうの声が千世の耳まで届いてきた。
『どうした? 随分機嫌悪そうだな。明日の受験頑張れよって言おうと思ったんだが……良いとこって何?』
「何だっていいでしょ」
『さては千世とヤってたんだな? こんな時まで盛るなんて、若いねぇ』
おちょくるような口調に千世の羞恥心が煽られる。こっちだって止めようとしたのに、泰志が『ちょっとだけ』と言って譲らないからだ。自分のせいではない。
『千世、今どんな顔してんの?』
「見たい? ちょっと待っててね~」
「えっ……、あの……」
泰志が上体を起こしてスマートフォンを操作し始めた。何をしているのかと思えば、廉佳の声がさっきよりもはっきりと聞こえてくる。
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