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第183話

「千世にぃだって辛かったはずなのに俺を励ましてくれて、ちょっとずつだけど元気が出てきたんだ。その時、凄いって思ったよ。さすが俺のお兄ちゃんだな、って」 「そう……僕、ちゃんと『お兄ちゃん』になれてたんだね。よかった」 「千世にぃはいつだって俺のお兄ちゃんだよ。でもあの時の千世にぃはほんとに、惚れるくらい優しくて、惚れるくらい頼り甲斐があって、惚れるくらい『お兄ちゃん』だった。だから惚れちゃったんだ」  泰志の笑顔はいつだって無邪気だ。昔から変わらない。 「そしたらいつの間にか千世にぃはどんどん可愛くなってくし、仕草の一つ一つすら好きなんだ……これは完全に恋なんだよ」 「そっか」  ――それなのに、泰志は愛人でいいの?  こんなこと、明日受験がある弟に言う言葉じゃない。千世はそれをぐっと飲み込んだ。 「泰志の気持ち、すごく嬉しいよ。ありがとう」 「うん……好きだよ、千世にぃ」  弟の言葉は、残酷なほど甘く響いた。

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