186 / 234
第187話
「それだけじゃないんだ。あのな、優秀賞以上はデビュー決定なんだよ!」
「それって廉佳さんの夢が叶うってことだよね!? すごいすごい、おめでとう!」
自分のことのように大喜びする千世の後ろから泰志も『おめでとう』と声をかける。
千世と泰志をモデルにした瑞々しい漫画。それが、本当に賞を取ってしまうなんて。
身体がふわふわするような幸福感が全身を駆け巡り、頭を突き抜けてしまいそうだ。まるで空へ浮かび上がるかのような心地だった。
「本当にありがとう。あ、そうだ。こないだ言ったデート、来週にでもしないか?」
廉佳が言っているのは、千世が先日のイベントでコスプレをする代わりにデートに連れて行ってほしいと言ったときのことだろう。
そこへ泰志が、千世の肩にのしかかってくる。
「なになに、二人でデート行っちゃうの?」
「うん。前に約束したんだ」
「へー、良いな~」
べったりと耳に張り付くような言い方をされてぴんと来た。
「――もしかして、一緒に行きたい?」
「無理にとは言わないけど。二人だけで楽しみたいなら止めないよ」
さすがに千世一人では決めかねて廉佳に視線を送る。すると意外な答えが返ってきた。
「俺は別に、千世とデートできるなら泰志が一緒でもいいけど。ダブルデートみたいなもんだろ」
それとも少し違う気がするのだが。
(まあ、廉佳さんが良いならいっか)
ともだちにシェアしよう!