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第188話

 昔からずっと三人で過ごしてきたから、弟だけを残して出かけるというのも気が引ける。それに三人の方が楽しいこともあるに違いない。  だが、妙に胸の奥がもやもやするのは何故だろう。泰志もデートに行くことは嫌なのではないはずなのに、千世の中にいるもう一人の自分がそれを認めていない。 「じゃあ泰志は受験のご褒美ってことでどうかな」  弟の行動に理由を付けて正当化することで『もやもや』を解消しようとした。  まず無いと思うのだが、二人のデートを泰志に邪魔されたくないと心のどこかで感じているかもしれなくて。そんな風に考えてしまう自分が嫌で、それを頭から追い出そうとして、千世は御託ごたくを並べ続けた。 「泰志も今まで頑張ってきたし、廉佳さんとの約束もあるし、僕たちの仲だったら三人まとめてでも良いよね」 「やったー! 千世にぃ大好き!」 「もぅ、調子が良いんだから」  千世はからからと笑う。  泰志の背後に見える青い空には、刷毛(はけ)でさっと塗ったような薄い雲が一面に広がっていた。

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