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第192話

 的を外してしまった千世を見かねて廉佳がこちらに身を寄せてきた。後ろから抱きつく体勢になり、背中に廉佳の胸がぴったりと合わさる。  そして千世の手ごとレーザーガンを握ると、息がかかるくらいの至近距離で耳元に囁いてきた。 「良いか、肘は軽く曲げて、右眼でしっかり的を見て――」  大音量のBGMにもかき消されない声に動悸が再発する。  逆の体勢でなくて良かった。自分の鼓動を感じ取られないで済むから。 「ほら、当たった」 「あ……」  次に吐息が触れた時にはもう引き金が引かれていた。  廉佳ばかりに気が向いてしまって、千世はその手で何もしていなかったことに気付く。 「そこの二人、くっつきすぎなんですけど~」 「別に良いだろ、今日は俺たちのデートなんだ」 「はいはーい」  泰志が頬を膨らませてしまったので、千世は媚笑(びしょう)を浮かべながら言った。 「なら、高いスコアを出した方が次にアトラクションで僕の隣に来られるっていうのはどう?」 「面白いな。受けて立つ」 「やった! なら頑張っちゃお~」  レーザーガンを構える泰志は、口調こそおどけていたが眼差しは真剣そのものだった。射的が得意な泰志と銃に詳しい廉佳。その二人が競い合ったらどうなるのか興味があったし、彼らを取り成すのに丁度良い条件だった。  何はともあれ、二人が楽しそうだから良しとしよう。  千世は去っていく廉佳の温もりに名残惜しさを感じながら、再びレーザーガンを握る手に力を籠めた。

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