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第193話

「ねえあれは? 次はあそこに入ろうよ」  泰志の指の先に見えるのは、古びた苫屋(とまや)()した建物。そして看板の煽り文句は『最恐! 絶叫! 禁断の幽霊屋敷』。 (うわぁ、『いかにも』って感じだな……)  オカルトや霊的なものは信じていないのだが、お化け屋敷となると話は別だ。ああいう所は暗い中で突然音や振動を用いて驚かすから心臓に悪い。しかも見た目で怖がらせてくるような幽霊ばかり出てくるので、お化け屋敷はどちらかというと苦手だった。 「千世は平気なのか?」 「大丈夫大丈夫! 俺がついてるからね」  泰志が千世の代わりに答える。  さっきのシューティングゲームで僅か十点差で勝利した泰志は自信満々で、もうそこに行く気しかないようだ。 「……ちょっと怖いけど、泰志がいてくれるなら入っても良いよ」 「ほら、千世にぃもこう言ってるし」 「まあ、それなら」  ゲームに負けたせいか少しご機嫌ななめの廉佳は渋々ながらも同意してくれた。へそを曲げている廉佳なんて滅多に見られないから、千世はこんなことにさえも笑みを零してしまう。 「千世? 何笑ってんだよ」 「ふふっ、何でもないよ。早く行こう」  今度は千世が二人の手を引く番だった。  こちらは人気があるようで、三十分ほど待った後千世たちの順番が回ってくる。

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