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第203話
狭いゴンドラの中では、並んでいる間にじゃんけんで決めた席――千世の隣に廉佳、二人の正面に泰志が座っている。
無邪気な泰志とは裏腹に、廉佳は窓枠に肘をついて夕暮れのしっとりとした雰囲気を味わっているように見えた。
千世は廉佳との距離の近さに胸を高鳴らせながら、徐々に小さくなっていく人混みをなんということはなしに眺めていた。
「千世はもう高いところ怖くないのか?」
「それは子供の頃の話だよっ。今はもう平気だから」
「俺の手握ってても良いんだぞ」
「……~~っ、別に怖くないからね」
廉佳と手を繋げるという誘惑に負けて、千世は差し出されたそれに指を絡めた。ついでにもう苦手なものは克服したということを示すために怖がっていないことを強調する。千世だって成長しているのだ。
「陽が沈みそう……あ、ねえ廉佳さん覚えてる? オープンキャンパスの時もすごく綺麗な夕焼けだったよね」
「そうだな。でもこうやって高いとこから見ると、地面に沈んでいくのがよく見える」
空を赤く染め上げる太陽はもう四分の一程度しか見えていない。西の空は既に薄暗く、紺色とのグラデーションで彩られていた。
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