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第209話

「僕……廉佳さんと泰志が好き。どっちも世界で一番好きなんだ」  優劣なんて付けられない。二人を同時に好きになり、恋をしてしまったから。 「お、俺も……千世にぃの恋人になって良いの?」 「うん。僕は泰志のことも好きだよ。欲張りだけど、二人とも恋人がいい」 「千世にぃ……っ」 「ぅわっ」  急に抱きつかれて、危うく窓に後頭部をぶつけそうになる。それでも千世は泰志の体重をしっかりと受け止め、彼の背中に腕を回した。  するとそれ以上の力で抱き竦められる。彼に与えられる息苦しささえも、幸福の証になっていた。 「何か、三人で付き合うっていう方がしっくりくるな。これで泰志のことで千世が悩むこともなくなるし、俺も気兼ねなく千世といちゃいちゃできるなっ」  兄弟の様子を澄まし顔で見ていた廉佳が、横から千世に飛びついてきた。 「れ、廉佳さんまで!? もう、苦しいよ」  笑い混じりに言うと、二人の笑顔がさらに深くなる。 「だって嬉しくてさ。千世にぃと恋人になれたの――ねえ、キスして良い?」 「う、うん……」

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