216 / 234
第217話 ※
「やっ、だめ…やめ、ぇ……っ」
「千世にぃ、嘘つくのはいけないよ」
「本当は気持ちいいんだろ。何が『だめ』なんだ?」
「だっ、て……」
気持ちが良すぎるからだめなのだ。強すぎる快感に狂ってしまうと、自分が自分でなくなっている気がして怖い。何度身体を重ねても慣れない感覚はある。
普段通りならここで彼らの手つきは優しいものに変わるのだが、今日は違った。
「――嘘をつく悪い子には、おしおきが必要だな」
「!」
冷たく突き放され、千世の瞳孔が開く。廉佳がこんな厳しいことを言うのは初めてだ。
そこで思い出した。今、彼は漫画の真似をしているのだと。
(ということは、まさか――)
漫画の中ではこうなっている。
千世のように感じながらも駄目だと頭を振る『兄』に、『弟』がお仕置きと称して自分が『兄』の中で精を放つまで達することを許さないのだ。
そんな酷なこと、耐えられるはずがない。
「千世。自分がどうなるのか分かってるんだろ?」
「ふ、ぅっ……んぁ」
すでに硬くなっていた自身の裏側を指先で撫でられて声が震える。
ばくばくとうるさく鳴り響く心臓は警鐘だった。が、腕が不自由で何の抵抗もできない。
「泰志、悪いけどそれ貸してくれないか?」
「ん? ああ、良いよ」
廉佳が指したのは泰志のブレスレット。細い革を何重か巻いたデザインのそれを、泰志が手首から外す。
ともだちにシェアしよう!