7 / 10
甘い敗北
志狼は鉄平を胸に抱いて、広いベッドに横になった。そして落ち着かせるように、鉄平のアッシュグレイの髪を優しく撫でた。
「タマ。ごめんな。びっくりしたよな」
「……うん」
泣き止んだ鉄平が、すりすりと志狼の逞しい胸に頭をすり寄せた。
その子猫が甘えるような仕草に、志狼はたまらなくなってしまう。
鉄平の顔を上げさせ、そっと触れるだけのキスをした。逃げずに口付けを受ける鉄平に、少し安堵する。
ちゅ、ちゅ、と啄ばむようにキスをして、舌で鉄平の唇を突ついて開くよう優しく促した。
鉄平が薄く唇を開いて、志狼の舌を受け入れる。
「……んっ……」
志狼は深く、甘く口付けた。最後まで優しいキスだった。そっと唇を解いて、志狼は鉄平の様子を伺うように聞いた。
「……タマ。その、続きをしていいか?」
志狼の雄は硬いままだ。
「最後まで、エッチするの?」
「……嫌なら我慢する」
低く唸るような声で志狼が言った。
いつも強引な志狼が、珍しく鉄平の気持ちを優先したことに鉄平は驚いた。
マジマジと志狼の顔を見る。
相変わらず男の魅力に溢れているが、下肢に溜まった熱に眉根を寄せ、少し辛そうだった。
欲望を宿したエキゾチックな青い瞳が、鉄平にお伺いを立てている。
───しろう……。
こんな志狼は初めてで、鉄平は心臓がドキドキしてくるのを感じた。
華奢な腕を上げて、志狼の太い首に絡めて引き寄せた。
「優しくしてね」
照れ笑い顔の鉄平のあまりの可愛いさに、むしゃぶりつきたいのを志狼はぐっと耐えた。
「わかった」
志狼は再び鉄平にキスをして、ゆっくりと華奢な体を組み敷いていった。
▫ ▫ ▫ ▫ ▫ ▫ ▫ ▫ ▫ ▫
「あっあっ……んぅ、は……あぁあ!」
対面座位の体位で、志狼の逞しい腕に抱かれて、志狼の膝の上で鉄平が甘く鳴いた。
少しの距離も離れるのは嫌だとばかりに、志狼は鉄平を強く、深く、その腕の中に抱いた。
ゆるゆると腰を回して、鉄平の性感を高める。
「あっ……しろぉ……あぁあ」
鉄平の小さな頭を大きな手で抱え、キスをして、深く舌を絡ませる。
「……ん、ん……ふぅ…あ……ん」
「……タマ」
まるで猫がゴロゴロと喉を鳴らすような表情で、気持ちよさげに鳴く鉄平に志狼の心臓が早鐘を打つ。
この少年が可愛くて仕方ない。
もう志狼は鉄平を手放すことができないと痛感していた。
今まで誰にも本気にならず、あと腐れのないセックスだけをしてきた男が、こんな小さくて平凡で、無知で無垢な少年に囚われたのだ。
鉄平を抱きながら、志狼は敗北感に似た感情を味わっていた。
だが、それはとても……とても甘い敗北だった。
志狼は繋がったまま、そっと鉄平をベッドに横たえた。
ゆるゆると腰を回しながら、鉄平の頬に張り付いたアッシュグレイの髪を優しく梳いた。
その柔らかな触れ方に、鉄平は閉じていた目を開いて志狼を見上げて、ハッと息を呑んだ。
ひどく優しくて、真剣な眼差しで鉄平の顔を見ていたから。
「……なんで、そんなに……見てるの?」
「ん?……見ていて飽きないなと思って」
志狼は鉄平の頬に頬をすり寄せて囁いた。
「お前をずっと見ていたい……鉄平」
ふいに蕩けるような甘い声で名を呼ばれ、鉄平は小さく震えた。
その震えは内側にも響き、体内に深く埋まる志狼の雄を心地良く締め付けた。
「……あぁ。気持ちいいな」
「ぁ……あ、ん」
そして志狼はもう一度、鉄平に甘く口付けた。
「……ん、ん……むぅ、あ! しろぉ」
徐々に腰の動きが激しく、情熱的になる。
「あっ! あっあっ───ッあぁああ!」
志狼は鉄平を腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
激しく揺さぶられる鉄平は、振り落とされないよう必死で志狼の逞しい背に縋り付く。
お互いに、これ以上ないくらいに抱き合って、絶頂を目指した。
「あっ! あ! あ!……はぁあ!……ぅう、あ!」
「ああ……鉄平……」
「あっ……しろ…ぅ……も、イク───ッ……ぁああっ!!」
「……鉄平ッ!!」
志狼は限界まで鉄平のアナルに男根を付き入れて、すべてを注いだ。
鉄平も志狼の逞しい腹に擦り付けるようにして、絶頂に達した。
ハァハァと、二人して荒い息を吐き、繋がったままグッタリと脱力した。
二人とも、今日はひどく離れがたく感じていた。
ともだちにシェアしよう!