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ピロートーク
鉄平がベッドでグッタリと寝ている間に、志狼が風呂の準備をした。
抱きかかえられて、再び風呂に入る。今度は普通の湯だ。
志狼の大きな手で体と髪を洗われた。
十代の時代を喧嘩に明け暮れていた志狼の手はゴツゴツとしている。
だが無骨なようでいて、柔らかく、優しい手つきで鉄平の髪を洗った。
風呂から上がったときには、鉄平は心地良さにウトウトしていた。
猫のように丸くなって、ころんとベッドに転がっていると「腹減ったな」と、志狼が呟いた。
お昼ご飯時はとっくに過ぎていた。
「あ!」
「ん?」
鉄平が目をパッチリと開いて、ベッドから跳ね起きた。
ガサガサと袋から羊羹を出す。
「しろう。これ、あげる」
「松吉屋の栗羊羹じゃねえか」
志狼が少し驚いた顔をする。
何か袋を大事そうに持っていたとは思っていたが、抱きたい気持ちが勝っていて気付かなかった。
「最後の一個だったんだよ。ほんとに人気なんだね」
「わざわざ並んで買ったのか?」
「うん。買えてよかった」
えへへと笑う鉄平に、息苦しい程に胸が締め付けられた。
───ああ……自分はこの少年が好きだ。
こんな小さなことで、幸せだと感じてしまう。
そんな感情を呼び起こさせるような相手は初めてだった。
たまらなくなって、志狼は鉄平の頭を引き寄せ口付けた。
「あっ……ん、んぅ」
感情のままにキスをして、そっと唇を解く。
大きな手で鉄平の頬を包み、真正面から見つめた。
向日葵の瞳が少し潤んでいる。いつまでも見ていたい。志狼の好きな瞳の色だ。
力強く、情熱的なオリエンタル・ブルーの瞳で、鉄平の瞳の中の向日葵を見つめた。
「お前が好きだ」
「……っ!!」
鉄平が息を呑み、一瞬遅れて顔を真っ赤にした。
志狼は再び鉄平にキスをした。角度を変えて、何度も。
鉄平も志狼にキスを返す。
深く、長く、キスを続けて、唇に直接吹き込むように志狼が囁いた。
「……もう一度、抱きたい」
「……ぅん……」
鉄平が小さく返事をした。
その声に志狼はゆっくりと鉄平をシーツに上に横たえ、包みこむように覆いかぶさっていった。
end
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