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4.【 tab 】side f
襄一さんの休憩時間に、学内を案内してもらった。
学園祭の出し物で賑やかなメイン通路を抜け、本館、そして研究棟へ。
仕事場だから当然かもしれないけれど、襄一さんの顔が冷ややかに固まっている。
この人は真面目で口数が多い方ではないから根暗に映るかもしれないけど、表情が硬い人ではなかった。すれ違う人に会釈はするものの、その顔はよそよそしいまま。
あの頃、縁側で過ごす時間の襄一さんは、何かに悩んで表情が晴れない事はあっても、今のこの 凍てつくような無表情 では無かった。
……俺には解らないけれど、今のこの人には凍った仮面が必要なんだろう。
「俺だけに見せる顔、見せてよ」
研究室へ向かう背中に、聞こえない声で呟いた。
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