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『明に会いたいよぉ。』 『明、大丈夫?』 『ねぇ、一度でいいから、会いたい。』 舜のメッセージは何度無視しても止まらなかった。 その度に僕の心はかき乱された。 でも、舜は無理に会いに来ることはしなかった。 ずっと待ってくれている。 その気持ちがわかるから、僕は苦しくて堪らなかった。 あんなに強引で、俺様なくせに。 こんな時はどうして来ないんだよぉ。 来てくれたら、きっぱり別れるのに。 思いっきり突き放してやるのに。 何で僕のことを待ってんだよ。 できないよ。 舜からのメッセージが来ないようにするなんて。 だって、本当は待ってる。 僕だって、僕が舜に触れたくなる日を待ってる。 舜とキスしたいと思いたい、と思ってる。 舜、捨てないで。 僕のこと、諦めたりしないで。 僕は裏腹な感情に、囚われていた。 部屋を片付けていると、ベッドの下から、指輪が出てきた。 (指輪?) 見覚えのない指輪だった。 舜は時々、ファッションで指輪をしていたけど、この指輪は見たことがなかった。 細いリングで、女物のようだった。 でも、この部屋には舜しか来たことがない。 (舜に返さなきゃ。) 指輪を傾けると、キラキラと光を反射した。 (これって何色なんだろぉ。) ゴールドよりは優しい色で、茶色というほどくすんでいない。 何もないシンプルなリングだった。 ふいに指に通すとぴったりだった。 ドキンと胸が跳ねる。 はめてみると、細いおかげでいやらしい印象のない、素敵なリングだった。 (思い出にもらっていいかな。) 胸が締め付けられて、また涙がポロポロ流れた。 僕ってこんなに泣き虫だったんだな、と気づく。 『引っ越したよ。良かったら、来ない?』 舜からのメッセージに驚いた。 (僕のために引っ越したの?!) と、まず思った。 もう2ヶ月が経とうとしていた。 そろそろ、はっきりと舜に別れを告げないと、あまりに可哀想になってきた。 指輪を指でなぞりながら、覚悟を決めた。 『行く。』 『待ってるよ♪』 メッセージのあまりの早さにドキッとした。 (舜…。) 明日、会いに行く。 僕は胸が張り裂けそうだった。

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