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醜いアヒルの子
「未央、大丈夫か⁉」
ドアが開いて、アツが下りてきた。
彼、四月生まれだから一つ上。クラスは一緒だけど。
クラスメイトの中で一番大人びているかも。
精悍な顔立ちで、人なつっこい、優しい性格はは、不思議と人を寄せ付ける。
女子にダンドツの人気を誇る彼。
こんな僕とは比べ物にならないくらい、キラキラ輝いていて、すごく格好いい。
だからかな、気が付けば彼の事が好きになってた。
でも、彼には、年上の可愛い彼女がいるから、片恋のまま。
側にいるのは正直辛いし、しんどい。
でも、友達としてなら・・・と、自分なりに割り切ったつもり。
「ごめん。目茶苦茶臭いよね・・・」
「まぁ、確かに・・・でも、気にならないよ。取り敢えず、俺んち行こう」
「うん。でも、車汚すから・・・」
一歩後ろに退いた僕の体がふわりと浮いた。
「俺が未央を抱っこして乗ればいいだけの話しだろ⁉何か違うか⁉」
「違くないけど」
わたわたする僕にはお構い無しのアツ。おばちゃんに、お礼を述べて、そのまま車に乗り込んだ。
「寺田さんごめんなさい・・・」
彼は、アツの守役の方。
本当、すみません。
あとで、ちゃんと掃除しますから。
「いいえ、気にしないで下さい。しかし、毎度ながら、大変ですね」
寺田さんは、鼻をハンカチで押さえ、呆れながらも笑うしかないみたい。
車で五分も走れば、すぐ、アツのうち。
両親共にお医者さんで、地元の名士。高い門に囲まれ、警備も厳重そのもの。
そんないい所のお坊ちゃんである彼が、幼馴染みというだけで、気色悪い僕と仲良くしてくれるのか、今だもって全然分からない。
車が停まるなり、アツは、僕を抱き抱えたまま、門を通り、自宅へ。
「このまま、風呂に行くぞ。しっかり掴まってろ」
「待って、靴‼」
僕にはやはりお構い無しの彼。
風呂場に直行し、ポンポンと自分の服を脱ぎ捨てると、均等のとれた隆々とした筋肉質の体が姿を現した。
何度みても、やっぱり見とれてしまう。
「アツ、待って‼」
彼の手がグジャグジャに濡れたTシャツを脱がし始めたから、慌てて止めた。
「今さら恥ずかしがる事ないだろ⁉未央の裸は、子供の時から見慣れているよ。はい、バンザイして」
「う、うん」
彼と、彼の両親は、僕の性別が二つある事を知ってる。
おばさんは、小児科の先生で、僕の主治医であり、なんでも相談にのってくれる。
いわば、お母さん代わり的な存在。
大好きな彼に脱がせて貰って、手が触れる度、ドキンドキン、ドクドク。
今にも、心臓が飛び出そう。
「洗わずにそのままでいいから、おいで未央」
ジャブ~ンと、アツが先に入って、手をおっきく開いた。膝の上においでって事かな?
躊躇していると手を引っ張られ、ドブ~ンと派手に水飛沫が上がった。
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