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醜いアヒルの子
泡だらけの浴槽の中で、頭を洗って貰い、アツの手が体に触れた瞬間、ビリビリと痺れが全身を走った。
「体は自分で洗えるから‼」
「ちゃんと綺麗にしないと」
「アツ‼」
慌てふためく僕に構わず、彼の大きな手は、肩から肩甲骨に触れ、背骨のラインを下へと滑り落ちていく。
「アツ、本当、そこはいいから‼」
「何で⁉触られるの嫌⁉」
「だって・・・」
温めのお湯なのに、体がどんどん熱くなっていく。
「未央の顔、ゆでたこみたい」
クスクスと、アツが笑って、
「泡流そうか」
頷くと、手を引っ張られ、一緒に浴槽から出ると、シャワーの雨が頭上から降り注いだ。
アツの視線を背後に感じたけど・・・。
気のせいかな。
お風呂から上がると、着替えが準備してあった。
「アツ、ごめんね。僕のせいで、いっつも迷惑掛けて」
「未央は何も悪くない。それより、ちゃんとご飯食べてる⁉」
アツの言葉に何も答えられなかった。
昨日の夜から、食べ物が咽を通らない。
喧嘩が始まってそれどころじゃなくなって。
しかも、ゴミがお味噌汁のお碗に入ってると、大騒ぎされて、折角作ったのに、おかずとご飯、全部、ゴミ箱に捨てられて。
そのあと、何事もなかったように、父と二人、外にご飯を食べに出掛けていった。
「答えたくないならいいよ。お腹がすいたら、ちゃんと言えよ」
「うん、分かった」
着替えを済ませて、浴室から出ると、寺田さんが待っていた。
「未央さん、旦那様と奥様がお呼びですよ」
彼の険しい表情に、仏の顔も三度までーーそんなことわざを思い出した。
僕、もう行くところないよ。
どうしよう・・・。
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