5 / 120
アツの兄弟
躊躇する間もなく、佳大さんに手を引っ張られ、そのまま、二階のアツの部屋に。
好きな彼の匂いに溢れたベットに腰を下ろすと、佳大さんも、隣に腰を下ろした。
アツも付いて来ようとしたけど、佳大さんに止められた。
「頼む。十分だけ・・・二人きりにして欲しい」
アツ、何か言いたげだったけど・・・。
「アツと同じ、石鹸の匂い」
「それは、その・・・」
「昔から仲がいいよな。アツの事、好きだろう⁉」
「佳大さん、そ、その、えっと・・・」
「一目瞭然だ。見れば分かる」
佳大さん、穏やかな表情はそのままで、苦笑いを浮かべていたけど・・・。
「アツの事、今、百パーセント好きだと思う。好きままで構わないから、未央が十八になるまで、そのうちの二十パーセントぐらいは、俺の事、好きになって欲しい。俺も、未央に好きになってもらうよう努力するから」
急に、表情が変わって。
真っ直ぐな眼差しで見詰められて。
胸が、締め付けられるくらい苦しくなった。
だって、アツ以外の人を好きになるなんて・・・そんなの、絶対、無理に決まってる。
分かっていて、なんで、彼は、そんな哀しい事を僕に頼むの?
「あと、未央。これからは、俺以外の男に肌を見せるのを控えて欲しい。アツと一緒に風呂に入るのも、出来れば止めて欲しい」,
「佳大さん、言っている意味が・・・」
「さっき、父も言ったと思うが、未央は、いずれ俺の『妻』になる。例え、兄弟、身内でも、未央の肌を見せて欲しくない。意外と、嫉妬深くて、独占欲強いみたいだから
」
さらりと、佳大さん口にしていたけど。
ものすごく、恥ずかしい事を言われたような・・・。
「そうだ。アツにも、未央と一緒に風呂に入るのは止めるように言っておいたから、いいな⁉」
念を押され、頷くだけで精一杯だった。
彼は、気色悪くないのだろうか。
男性と女性の性ーー両方の性を持つ僕を。
こんな中途半端のどこがいいの⁉
ふわりと、彼の掌が、僕の両手に触れてきて、遠慮しがちに包み込むように握り締められた。
「父に言われたからではない。興味本意でもない。ただ、家族に虐げられる君を救いたいと思っただけ。気が付けば、好きになっていたけど」
「・・・あの・・・」
何か言わなきゃ。
頭では分かっているけど、言葉が続かない。
「佳兄、いいかな、部屋に入っても」
あっ、これ、アツの声‼
慌てて、佳大さんの手を払い除けた。
ともだちにシェアしよう!