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アツの兄弟

躊躇する間もなく、佳大さんに手を引っ張られ、そのまま、二階のアツの部屋に。 好きな彼の匂いに溢れたベットに腰を下ろすと、佳大さんも、隣に腰を下ろした。 アツも付いて来ようとしたけど、佳大さんに止められた。 「頼む。十分だけ・・・二人きりにして欲しい」 アツ、何か言いたげだったけど・・・。 「アツと同じ、石鹸の匂い」 「それは、その・・・」 「昔から仲がいいよな。アツの事、好きだろう⁉」 「佳大さん、そ、その、えっと・・・」 「一目瞭然だ。見れば分かる」 佳大さん、穏やかな表情はそのままで、苦笑いを浮かべていたけど・・・。 「アツの事、今、百パーセント好きだと思う。好きままで構わないから、未央が十八になるまで、そのうちの二十パーセントぐらいは、俺の事、好きになって欲しい。俺も、未央に好きになってもらうよう努力するから」 急に、表情が変わって。 真っ直ぐな眼差しで見詰められて。 胸が、締め付けられるくらい苦しくなった。 だって、アツ以外の人を好きになるなんて・・・そんなの、絶対、無理に決まってる。 分かっていて、なんで、彼は、そんな哀しい事を僕に頼むの? 「あと、未央。これからは、俺以外の男に肌を見せるのを控えて欲しい。アツと一緒に風呂に入るのも、出来れば止めて欲しい」, 「佳大さん、言っている意味が・・・」 「さっき、父も言ったと思うが、未央は、いずれ俺の『妻』になる。例え、兄弟、身内でも、未央の肌を見せて欲しくない。意外と、嫉妬深くて、独占欲強いみたいだから 」 さらりと、佳大さん口にしていたけど。 ものすごく、恥ずかしい事を言われたような・・・。 「そうだ。アツにも、未央と一緒に風呂に入るのは止めるように言っておいたから、いいな⁉」 念を押され、頷くだけで精一杯だった。 彼は、気色悪くないのだろうか。 男性と女性の性ーー両方の性を持つ僕を。 こんな中途半端のどこがいいの⁉ ふわりと、彼の掌が、僕の両手に触れてきて、遠慮しがちに包み込むように握り締められた。 「父に言われたからではない。興味本意でもない。ただ、家族に虐げられる君を救いたいと思っただけ。気が付けば、好きになっていたけど」 「・・・あの・・・」 何か言わなきゃ。 頭では分かっているけど、言葉が続かない。 「佳兄、いいかな、部屋に入っても」 あっ、これ、アツの声‼ 慌てて、佳大さんの手を払い除けた。

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