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アツの決意
「もしかして、るのあ先輩の事⁉信じてもらえないかも知れないけど、彼女とは何でもないよ。彼女のフリをして貰っていたんだ」
「嘘・・・嘘だ‼そんなの、信じ・・・」
最後は涙に飲まれた。
「・・・だって・・・いっつも、仲良くて・・・」
鼻を啜りながら、必死に言葉を紡ぐ。
「るのあ先輩は、理兄に片思いしてる。同じクラスで、生徒会も一緒・・・苦しい思いや、辛い思い・・・不思議と共通点が多くて・・・」
あったかいーーアツの手も大きくて、温かい温もりに溢れてる。
その手が頭に触れてーーそっと優しく撫でてくれた。
もう、それだけで、幸せ過ぎて、涙腺が崩壊寸前になった。
「未央が家族を思う気持ちは、充分、分かる。でも、だからと言って、自分を犠牲にしないで欲しい。俺は、佳兄と比べると、まだまだガキで、金持ちでも何でもない。でも、未央を思う気持ちだけは、負けない」
「・・・アツ・・・ゴメンね・・・」
素直になれない自分に腹が立つ。
でも、もう決めてしまったこと。
。
「アツ、未央ちゃんを泣かせたら駄目だろう」
寝癖はそのままで、白衣を身に纏った大志さんがぬっと現れた。
「大志さん、そういうわけでは・・・」
「俺は、鬼頭の家を勘当された身だ。アツと、未央ちゃんの味方だ。金曜日の夜、九時に、ここに集合。駅まで送ってくよ。あと、これ、診断書」
紙切れ一枚を渡された。
「栄養不足と、睡眠不足による過度の心労により・・・あの、これは⁉」
「アリバイを作って置かないと、のちのち面倒だろ⁉学校にちゃんと提出しろよ」
アツの方を向くと、うん、うん、と何度も頷いていた。
多分、一番、厄介なのが、佳大さん。
嘘だって、バレないようにしないと。
僕、すぐ、顔に出るタイプみたいだし。
あと、アツと、駆け落ちの予行練習をすることも、勿論、内緒。
そういえば、駆け落ちって、そもそも、何だろ⁉
アツと一緒に出掛ける事なのかな⁉
それなら、すっごく楽しみ。
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